2025年09月10日
株式会社メトロール 見学会記 (NCネットワークのイベント, 工場見学~関東)
(株)メトロールは、東京都立川にある精密センサーメーカーである。
マシニングセンター、NC旋盤などに利用されるタッチプローブセンサーや、
研削盤の自動化を可能とする空圧式センサーなどの開発を行っている。
売上25億、営業利益2億5千万円
正社員数50名の優良企業である。
また、インターネットを通じて、世界74カ国にセンサーを販売し、売上の6割を海外で稼ぐ。
松橋社長は、当初、会社を継ぐつもりはなく、日清食品に勤めた後、
豆腐製造の企業に招かれた。その後、豆腐の中に異物混入が起きる事故などが発生し、
経営に悩んでいた所、先代から「どうせ悩むなら、自分の会社で悩んだらどうだ?」
と言われて、メトロールに入社した。40歳の時である。
▲松橋社長
インターネットを活用し、世界にセンサーを販売するきっかけとなったのは、
自社で1万円で売っている製品が、中国のWebサイトで、30万円で売られているのを見つけたことに始まる。
1999年新潟で錦鯉を世界中に販売しているECサイトを運営する企業を訪ね、工業の世界では、日本でも数社しかない時代に
ECサイトを構築した。
その後、サイトだけでなく、ドイツ、米国、中国、世界中の展示会にも出展するようになった。
コロナ前には、ドイツ、中国、シンガポール、タイなどに駐在事務所を置いたが、現在は、すべて撤退し、
日本からインターネットを通じての販売のみとなっている。
当初は、開発・設計・組立のみをしていたが、現在は、電子基板、切削なども自社で製造し、生産力を高めている。
生産システムは、会計システムと直結しており、経理部門がなくとも日時決算が行われる仕組みを構築した。
DX化は、相当進んでいる。
松橋社長は「弊社で大切なのは、お客様目線での開発です。創業者なきあと、誰が新製品を作るのか?ということでは、相当、悩んできました」と語る。
何のために自動化を行うのか?という問いに対して、「社員の心に時間と余裕を作るため」と松橋社長
余裕を持った気持ちで仕事をしないと、新製品は生まれない、との持論に達した。
現在は、「共感x対話」によるチームビルディングが、新しい血を生む原点になる!
との結論から、チームビルディングに力を注ぐ。
その成果として、空圧式ギャップセンサを開発した。これは、80歳 24歳、25歳のプロジェクトで、研削盤の自動化を可能にする開発となった。
現在、国内最大の研削盤メーカー岡本工作機械にも採用され、東京都ベンチャー技術大賞、知事功労賞などに輝いた。
大手メーカー出身の技術者を11名採用し、若手メンバーとチームを作り、電子基板の製造ラインや、組立ロボット、自動搬送装置など、自動化システムや、新製品開発を行う。
今後の日本製造業の方向性を示す中堅企業の今後に期待したい。
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2025年08月19日
筒井康隆 新作「敵」 (趣味~小説)
筒井康隆先生の新作、「敵」読了。
筒井康隆、老年期の老年文学の傑作だ。
今年、初めに映画にもなった「敵」は、「敵」というタイトルは小説の中身とは何も関係ない。
主人公は、元フランス演劇・文学の教授で、引退して10年近くの歳月が経っている。
妻も亡くなって久しい。
老人の毎日は、過去の記憶を錯綜することにある。
スーパーに買い物に行き、美味しい食事を作ろうにも、スーパーで売っている食材は、老人の1人分の食材としては、多すぎるので、どうやって小分けしながら、食べていくか?
どんなお酒にこだわり、どんな映画(TVであったり、ビデオであったり)を見ながら、食べるか?
そんな日常を細かく、丁寧に描写する。
思わず、そうだよなぁ、と頷いてしまう。
主人公には、妻の他に、2人ほど、気になっていた女性がいた。
いずれも関係は、出来なかった(教授のプライドの高さが要因か?)が、今となっては常に妄想の対象となる。
毎日の1人暮らしの中で、妄想と、現実を行き来し、お見合いで出会い「愛しているよ」との言葉を、生涯、言うことが出来なかった妻のことを
生涯の伴走者として、愛していることに気付き、妄想を深めていく。
虚無感を以って終わるが、死に向かう、老人は常に孤独と対峙しながら、プライドを維持してい生きていかねばならない。
筒井康隆先生、やはり、天才です。
僕の筒井康隆は、エスパー七瀬シリーズ(「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」が、始まりだ。
「時をかける少女」などのジュブナイル文学も手掛け、「富豪刑事」「パプリカ」のような設定上手な小説群も多い。
ショートショートや、「日本以外全部沈没」などスラプスティックコメディを経て、文学=虚構という図式の中で「虚構船団」「虚ろい人たち」にいったん行きつく。
実験小説として、「残像に口紅を」は秀逸だ。あいうえおかきくけこ・・・の文字がひとつづつ、世界から消えていく、という設定で、最後に残る文字は?
という小説だが、異様に面白い。
僕の中での筒井先生の最高傑作は、「旅のラゴス」だ。
いつの時代か?世界を旅するラゴスの話だ。
筒井先生が追い続けたのは、読者の伴奏から少し外れた意外性だ。
小説・漫画・映画などあらゆるフィクションは、読者(視聴者)の共感が必要となる。
共感は、読者が伴奏して、「そうだ、そのとおりだ、それは悪だ、それは正義だ」と共感を得ることだ。
しかし、共感は、作者が創造したフィクションであり、虚構の世界である。
面白い文学の共通性は、共感を得つつも、読者が、思いもよらなかった世界に連れて行ってくれることである。
そういった意味で、筒井先生は、60年にわたる作家生活の中で、常に意外な現実を僕に提供してくれたスーパークリエイターである。
尊敬。
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2025年08月01日
碌々スマートテクノロジー様見学会 (NCネットワークのイベント, 工場見学~中部・北陸)
碌々スマートテクノロジーさんを訪問した。
今回は、矢野社長から、プレゼンを頂いた。
創業122年、「お客様のお困りごと解決する」を目標に工作機械を作っている。
1903年 創業といえば、ライト兄弟が、飛行機を発明した年だ。
戦中に静岡に移動。現在のメイン工場は、静岡にある。
現在、海外比率 国内2、海外8の割合で、生成AI、データセンター、GPUなどの
案件が次から次への舞い込み、かなり忙しいとのこと。
日本で最初の工作機械メーカーは、池貝。次が新潟鐵工。
碌々さんは、3番目に古い、由緒ある工作機械メーカーだ。
100年以上の歴史の中で、精密加工に特化し始めたのは、2000年代からだ。
鏡面加工で、米国の大手通信企業向けイヤホン金型を削った鏡面加工事例。
ここから、碌々さんの快進撃が始まる。
数社のコンペを勝ち抜き、高精度で、磨きレスの超精密マシニングセンターメーカーとしての知名度があがった。
最近では、狭ピッチ穴明提案が多いそうだ。
CPU導通検査用治具では、穴径0.02mm、20日間かけて30,000穴を明ける治具で、壁厚 5.0μ。
また、レンズに関する需要は、カメラレンズ プラスチックレンズ→スマホ、自動車、医療関係
鏡面加工+高精度穴位置加工なども、引合いが多いという。
超高精度高速微細加工機 Vision
超高精度高速微細加工機 AndroidⅡ
その他、半導体金型、リードフレーム、封止、GPU、燃料電池セパレータ
医療関係では、バイオ研究、DND検査 生薬開発
ブランド品では、高級時計メーカー各社、高級ライターメーカなどにも採用されている。
様々な業界・業種に幅広く高精度マシニングセンターを提供している。
世界のテクノロジーを牽引している碌々スマートテクノロジーの今後に日本のものづくりの底力を見せて頂いた。
本見学会の開催レポートを公開中!
ぜひ、ご覧ください。
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2025年07月04日
壮大な中国 (趣味~鉄道, NC社長・内原康雄)
5年ぶりに中国に行ってきた。
今回は、FNAイベントへの参加が仕事だが、前々から気になっていた三国志の蜀の都「成都」にも行ってきた。
「史記」「三国志」「水滸伝」などで、僕も小説、ゲーム、映画、漫画などで、歴史は漁っているが、史跡を訪ねたのは初めてだ。
劉備・諸葛亮・関羽・張飛などの史跡がある博物館
中国といえば、計画都市であるが、おそらく最大の計画都市は、重慶と思われる。
上海、北京と比べても、圧巻の夜景郡。作られた大都市としては、世界最高峰だ。
曲がった高層ビル
夜景郡
いやはや、なんとすげぇんだ、重慶。
成都の新幹線駅
新幹線駅は、どこに行っても巨大駅。
成都は28番ホームまであった。
途中、西安駅は、30番線以上あった。
ちなみに上海、30番線
成都駅の出発表だが、上海、広州etc、各方面への新幹線が、毎時数十本。
すでに飛行機並みのインフラになってきている。
しかも新幹線よりもだいぶお安い価格設定(赤字も凄いそうですが・・・)
今回の最大のイベントは、なんといっても、成都~上海 12時間 新幹線ツアーである。
成都から西安、鄭州、徐州を通過し、南通から、上海まで 朝7時出発、夜19時着の弾丸特急だ。
その距離は、札幌~福岡を超える距離となる。
いやぁ、見応えがあった。
どこの都市でも開発が進み、ニョキニョキと巨大ビルが建てられている。
いいも悪いもあると思うが、進み方には驚愕である。
日本の北海道新幹線は、2030年開通とされていたが、2038年。
リニアも、2027年開業予定が、2034年と延期。
EVが世界的に、止まり始めているが、中国が、原発を計画通りに作ったら、世界最大の発電国になることも可能かと思った次第である。
交通事情やインフラを考えると中国がいかに凄い技術立国かがわかった、出張でした。
次回、FNAの報告します。
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2025年05月26日
〜 女性が、ガチ現場で大活躍する鈑金工場 〜 (NCネットワークのイベント, 工場見学~関西)
板金加工を中心に4事業を展開する株式会社イワサキを訪れた。
現在、イワサキをリードしているのは、岩崎基造社長。
来年、100年になる企業だが、その歴史は、栄枯盛衰だったと岩崎社長は語る。
社員数の最盛期は、売上40億、社員数170名の大所帯だった。
「私が入社した頃は、業界の違う大手メーカー2社と取引を行い、メチャ忙しかったです。
でも、忙しいのに儲からない。何で儲からないのか?追及すると、
一社のメーカーの製品は、やってもやっても赤字、それで、もう一方のメーカー1本に絞りました。
儲からない仕事を辞めたことで、黒字にはなりましたが、
今度は、取引を継続したメーカーもコスト低減が厳しくなってきて、そこから、一社依存ではなく、お客様を増やして、しっかりと利益を確保しながら経営しています」
▲工場見学会の様子
大手メーカーが撤退した病院向けの搬送用什器を展開させ、
現在は、病院向けのRFIDのタグ事業も順調だ。
こちらは、病院向けに薬や備品をタグで数量管理できるシステムとなっている。
多数の病院に納入。サブスクリプション・ビジネスで稼いでいる。
冷暖房システムも好調だ。
現在、地震・津波対策の全国強靭化対策の一環として、全国の体育館施設の冷暖房システムにイワサキのシステムが採用されている。
大手冷暖房機器メーカーとのすみ分けも、しっかりする中で、毎年、順調に製品が全国の体育館に納められている
技術向上に関しても、岩崎社長のこだわりは、強い。
イタリアのBLM社のパイプレーザー加工機を2億で購入した時のエピソードだ。
「イタリアのBLM社からは、日本には、代理店がないので、売れない、メンテナンスできないから、
と言われたんで。なので、メンテナンスは自分でやるからどうしても、売ってくれと頼みました。
それで買ったので、壊れたら自分たちで治す、を繰り返してました。
稼働率などは、本国がリモートで把握していたので、そのメーカーから日本の代理店をやってくれないか?」
と頼まれて、現在は、代理店事業も並走している。昨年度は12台の販売をされたそうだ。
イワサキ本体の板金事業のほか、上記、3事業は、それぞれ別の提携企業と別会社を作り運営することで、
多角化を図っている。
人財採用、登用、教育に関しても、現代社会を反映されたシステム構築を行っている。
レーザー、ベンダー、溶接、各現場でも20代の女性も多く活躍する、
「昔と違って、製造業社員の仕事内容が変わってきているんです。工場長は、ほぼ、4年毎に代わっています。
昔は、夜中まで頑張ってやりますよ。そんな人がよかったわけです。ともかく頑張って仕事をこなしていく人を何名も
集めている会社が強かった。しかし、今は、休みも、130日、しっかり取って、体力勝負ではなく、頭を使って効率よく仕事をこなす子に仕事がシフトしていっています。
ソフトや、システムを使いこなす子たちが中心です。
女子率も高いです。現場のリーダーは、ほぼ女性になってきました。
女性は、きめ細やかに対応できる人が多いのです。しかも年上の男性にでもハッキリとモノを言って主張することが出来ます」
誰もが利用できる自動見積システム、加工可否のシミュレーションソフト、溶接プログラムソフト、作業計画、マニュアルの電子化、
など、多くのシステムを社内構築している。
多くはMS(マイクロソフト)社のソフトの応用だが、セールスフォースも多いに活用。
AI、ロボットなども数多く、稼働。
まさにDXが自然と構築する工場を作り上げるポイントは、「出来る人の雇用」だ。
「今の製造業の仕事は、昔と違って、何年も掛けてじっくりと覚えていく、というスピードでは遅いんです。
見積、設計、製造、検査、あらゆる部署で、ソフトを掛け合わせて、数値化、見える化を図っていく。
そんなことを自然とこなしていく子たちを、毎年、数名づつ採用しています。
採用が決まったら、夏休みに時給1800円でアルバイトに来てもらいます。
そこで、うちの会社の仕事が本当にあうか、どうか、決めてもらうんです。
また、入社してからも、ものづくりが好きでもないのに、ものづくりの企業で働くって、もったいないですよね。
今は、就職氷河期ではないから、いくらでも働ける場所はあるんです。
向いている職場に行ってくださいと、最初から話すんです」
時代の最先端をいくイワサキの採用・社員のリーダー登用、教育は、一貫している。
職人技の伝承ではなく、すべて数値や、データに基づいたものづくりである。
「先輩に教わると変な癖が付くんです。なので、パイプ曲げであれば、イタリアまで研修に行ってもらうんです」
イワサキの教育システムは、今後の日本製造業の在り方の大きな見本となることを確信した。
株式会社イワサキ
板金製造、大阪市住之江区
社員数 60名
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