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2024年03月28日

(株)クロスエフェクト 代表取締役 竹田氏

(株)クロスエフェクトは、2001年設立 、社歴23年のものづくり企業である。
竹田社長とは、京都試作ネットを通じて、20年来の親交がある。
京都の町工場では、HILLTOP(株)さんと並んで、先進的な企業である。
先日3月15日、4年ぶりに工場見学を兼ねて、工場を訪問させて頂いた。


●創業の経緯
竹田社長の実家は、成形屋だった。
父の経営を見ていた竹田社長は、自分は親とは一緒に仕事が出来ない、と
親とも、話したうえで、大学卒業後、米国に遊学。
その後、日本に戻り、3Dの活用を中心とした(株)クロスエフェクトを設立した。
創業時は、3次、4次下請け企業の2次元図面の3D化の事業だ。
「当時は、それでも、そこそこお金を払っていただける企業がありました」と竹田社長は当時を振り返る。

(株)クロスエフェクトが順調に事業を伸ばす中、父が急逝。
父の事業の閉鎖を継ぐこととなる。
父の会社は、80人規模の成形屋であったが、1社依存のため収益性が低く、
竹田社長は、すぐに事業閉鎖を決断。
竹田社長が小さいころから、知っている古参の社員の前で、閉鎖を告げた。
その際には、主力のメガバンクの貸し剥しにもあったが、その際に助けてくれたのが、現在の京都信用金庫だったという(株)クロスエフェクトの主力銀行である。

その後、高速試作サービスを掲げ、事業を拡大していった。父から育ててもらった反面、父の経営と正反対の経営手法を学んでいく。
竹田社長に大きな影響を与えたのは、京都試作ネットを通じたピーター・ドラッカーの勉強会だ。
竹田社長は父から「建物に金を掛けるな、設備に金を掛けろ」と言われ育ってきた。
しかし、京都試作ネットの恩師、HILLTOP(株)の山本相談役からは「建物に金を掛けろ、設備は、ただのプリンターにすぎん」との教えを受けた。

クロスメディカル様外観.JPG

竹田社長は2015年に本社を建て替えた。
「設立前は、毎月70万円を支払って、貸し家を借りていたわけですが、新しい社屋は、150万円支払っていけば、借金も返せる。
やるなら今しかない、と考えました。その後、固定資産税だの、それだけでは済まない、と分かりましたが」と竹田社長は語る。
山本相談役の教えを実行した(株)クロスエフェクトのもとには、山本相談役の言った通り、優秀な社員が続々と集まるようになった。


●医療事業(クロスメディカル)への展開
(株)クロスエフェクトの主サービスは、短納期試作である。
現在も、「早さへの挑戦 ~FASTEST~」を掲げる。
そこでは、期待を超える速さで新製品の社会実装を実現する、との掛け声をもとに様々な製品メーカーの設計に関わる実装デザインを提供している。

▶クロスエフェクト様の実績はこちら

そんな(株)クロスエフェクトに国立循環器病研究センターの先生から、赤ちゃんの心臓モデルを最速で作って欲しい、との依頼が舞い込む。
最初に話が来た時には、CTデータの画像があまりにも粗いために断ったが、
数年後、同じ話が来た時には、これは挑戦する価値のある事業だと再考し、医療事業をスタートした。
医療事業の始まりについて、「第5回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞を受賞し、国のお墨付きを受け、あとは、薬事に関する許認可を取るだけだ・・と自動車免許でも取るつもりで始めました。そこからが医療機器販売に向けた苦しい戦いが始まった訳です。」と竹田社長は語る。
(株)クロスエフェクトの模擬心臓を利用した医療手術という画期的なアイディアだが、世界のどこを探しても前例がない事業である。
日本でこの医療機器の薬事承認を勝ち取るためには、まず術前シミュレーターという新カテゴリーを医療業界に認知し、医療適合するところから始まった。
2023年クラスⅡでの薬事承認、2024年夏ごろに保険適応予定だ。
まだまだ、事業としては途中半ばであるが、国の助成などもあり、ようやく大きな前進を遂げている。

クロスメディカル様製品.JPG

●デザイン事業(クロスデザイン)への展開
最速試作事業をやっている中で、デザインから受託する事業が多くなってきた。
「デザインで、もっとお客様の役に立ちたい」という気持ちから、
(株)クロスエフェクトでは、3D人財だけでなく、デザイン人財を多く、採用してきた。
竹田社長が、目を付けたのは、意匠権である。
従来は、デザイン設計を請負い、納品は、図面を納める。
しかし、共同作業で、意匠を検証し、量産図面に展開するお客様に対しては、
デザイン設計に対しての意匠権譲渡を本格的に開始した。
「従来のお客様に関しては、正直、離れていくお客様もあります。
しかし、デザインから量産図面を担う、一番大変な労働をしている価値を認めてもらうことは、弊社の今後の成長になくてはならない、と事業化を開始しました」。

日本の多くの金型屋では、これと同じ問題を抱え、技術を持ちながらも廃業・倒産に追い込まれた企業が多数ある。
竹田社長のデザイン事業での取組は、これに真っ向から挑み、製品メーカーとパートナーシップを結びながら、
実益をしっかり頂いていく試みだと感じた。

●クロスエフェクトの今後
~DX(AI)が進み、知的労働がなくなる~
クロスエフェクトクロスメディカルクロスデザインと3社を軸に活動範囲を広げる竹田社長。
会社を分けている理由の一つは、お客様が違うからです。
お医者様に営業に行く際は、礼儀正しいスーツを着て、時間通りに行かないと、先生に叱られます。
一方、デザイナーの世界は、短パンTシャツ無精ひげ当たり前の世界で、スーツで訪問しようもんなら、「どうした、結婚式の帰りか~」などと言われてしまいます。
なので、お客様によって、事業をしっかり分けて、対応しているのが現実です。

「弊社では、今、AI活用の中で、今後、どこのポイントで生きていくのかを実証実験を始めています。
従来は、IoT、DX、AIが進むと単純労働が無くなると言われてきました。
しかし、AIの出現で、なくなるのは知的労働で、実労働作業は、増えるのではないかと考えます」と竹田社長は語る。
例えば、デザイナーの仕事は、人間が120時間掛けてデザインしたものを、45秒で描くのがAIの力である。
弁護士AIに秘密保持契約書を読み込ませると、同じく45秒で、自社にとって有利、不利な契約内容を、いく通りの案を出してくる。
「AIを実装していくと、弊社でもデザインの仕事は、最速で出来るようになりますが、まだまだ実際に作れるようなデザインではないことが、多いです。しかし、数年で追いつくようになるでしょうね」
クロスエフェクトでは、すでに多くの社員がAIを利用しながら仕事をしているという。
さらに「Monozukuri Ventures」なる約40億円 規模のファンドも、京都試作ネットのメンバー及び、京都地銀各社が出資して立ち上がった。
今後のクロスグループはどこへ行くのか?
3D図面というVirtualから、事業をスタートした(株)クロスエフェクト竹田社長。
Virtualをどう操っていくのか?人間が操られるのか?
ものづくりの世界もSF検証をしなければならない時代に突入した。

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