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2007年06月21日

死んじゃうよ 作家・伊集院朔太郎

朝、いつものように家を出た。
いつものように駅まで歩いた。
いつものように改札を通った。
いつものようにホームまで歩いた。
いつもと違って前を若い女性が歩いていた。
突然、「ドン」と大きな音がして目の前の女性が視界から消えた。


「えっ」小心者のオレは思わず情けない声を出してしまった。
ホームに横たわる女性に向かって言った言葉がまた情けない。

「そんなところにいると死んじゃうよ」

たまたまそばにいた駅員さんと目が合う。
「自殺?」
どちらからともなく言葉が出た。
駅員さんは、すぐさま非常ベルを鳴らした。
駅に侵入してきた電車は緊急停止した。
そばにいた若者がホームに飛び降りて女性を助け起こしている。
オレは呆然と眺めていた。
線路に手をかけ、その手に頭を乗せた状態で横たわっている姿が頭に焼き付いて離れない。
眼下で若者が女性を助け起こしているが、身体が反応しない。
なんたって、飛び降りるところ見ちゃったもん。
なんかすご~くショックなんですけど。
なんかすご~く傷ついちゃったんですけど。

どうして死にたいのだろう?
どうして一人で自宅で死ねないのだろう?
どうして電車に飛び込めるんだろう?
どうしてオレの目の前なんだろう?

オレ、なんかしばらく立ち直れそうに無い気がする。
今日あたり、六本木行って慰めてもらおう。
あ~、あいつ今日休みだ。

うっち~へ告ぐ。
というわけで明日、六本木つきあっておくれ


2007年06月21日 11:45

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